訪問記(1)

有限会社千匠設計 代表取締役 岩田幸千さん

自然環境に溶け込む空間づくりの演出家
人と建物が一体化し、まるでシンフォニーを奏でているような趣きを醸し出す
建築士の仕事を一言で表現するなら“夢をカタチにする仕事”。建築物をただのモノとして捉えるのではなく、建築主の想いを叶える表現物だと考える。しかもそれは人の人生を左右するほどの…。今回は、一般住宅をはじめ、ビル建築、公共工事などを手掛け、独創的な作品を次々に生み出している岩田氏に建築家としての誇りや今後にかける夢などについて話を伺った。

顔の見える仕事で縁を紡いでいく

岩田さんは、昭和37年霧島市(旧牧園町)の生まれ。霧島連山を望む森と川に囲まれた自然豊かな環境の中で育ったと言う。この仕事につくキッカケはまさに『自然とのふれ合い』なのだろう。

岩田さんは、学校卒業後、地元の設計事務所に18年間勤めた。そこは公共工事が主体の事務所で、「使う人、住まう人の顔が見えないもどかしさがあり、小さくても自分らしい仕事、自分の持ち味を生かせる、やり甲斐のある仕事をしたかったんです」という。創業は2001年だ。

仕事に対するモットーを聞くと「お客様の想いをカタチにする」と間髪入れず帰ってきた。だからこそとことんお客様と向かい合うのだそうだ。設計の基本は、人にやさしい素材を使い耐震性に優れ長く使える建物、環境に貢献できる建物、そして何より居心地の良い空間づくりをモットーとしています。居心地の良さは住宅であれば生活にメリハリをもたらし、仕事空間であれば能率の向上や発想の豊かさをもたらしてくれる。

もう一つ大切にしているのが、人と人との『縁』。「私たちの仕事は額が額だけにお客様も慎重にならざるを得ません。『本当にこの人で大丈夫なの?』という不安が常にあるものです。そんな時に私どもとお付き合いのあったお客様から「あそこは大丈夫ですよ!」と声をかけていただく事も珍しくないのですよ」。さすが、縁を大切にする人ならではだ。

人は環境と一体の存在

仕事の進め方についても聞いた。「建築設計とは『生活デザイン』でもあります。住宅であれば、家具・インテリア・照明・カーテン・食器・寝具に至るまでよりよく住まうためのコーディネートまで考える事を常に心掛けています。」これは、最近とみに言われる「商品を売るのではない、商品がもたらす価値、目に見えないソフトを売れ」につながる。

「環境に溶け込む」ということもテーマだという。更地という言い方をはあくまで建築用語であって土地には必ず何らかの特性があるもの。土地は周りの環境と一体化した存在。地形、地質をはじめ、日当たり、風の向きなどその土地ならではの特徴を捉え建築計画を練っていく。この姿勢はすべての仕事に通じることだ。

パッケージ化してトータルで提案

建築業界は今景気の低迷、公共事業の縮小により価格競争の激化が進んでいる。そうした状況下、岩田氏に今後の戦略を聞いた。「建物は一生付き合っていかなければならない大切なパートナーです。だから簡単に価格だけで計ってはいけないものです。」と語る。今後は、コスト削減への努力もだが、設計士の役割をもっとわかっていただくような努力も欠かせないと力強く語る。

最近の傾向としてパッケージ化の流れが顕著だそうだ。例えば、住宅であれば土地と建物のセット、貸テナントビルであれば借り手の紹介、介護施設であれば土地探しから開業までをセットにするといったようにトータルでサポートしていくというスタイルだ。また、最近若い人が家を建てる傾向も強くなっているという。以前は子育てのめどが立ってからというのが多かったが、結婚後すぐ建てたいという人もかなりいる。しかし、土地と家までトータルで支払うとなると35年ローンが可能になったとはいえ、そう単純なものでもない。そうした二世代、三世代住宅にもシフトしていきたいという。

信頼される代理人

最後に今後の戦略を聞いた。「異業種の方々、例えば司法書士や土地家屋調査士・行政書士・税理士などを通じて建築主が希望していることのすべてをパッケージ化して提案することを心掛けています。現在の高齢社会にあって年配者の方は田舎の土地や建物が気掛かりという方が多くいらっしゃいます。相続はどうするか、再利用するならどういう形がいいのか、社会に還元したいがどういう方法があるのか、など様々なニーズがあるわけです。その時の相談相手にワンストップでお応えできるチームを組んでみたいのです」と。

また、設計士を利用することのメリットもキチンと伝えていきたい。という。よく設計と施工が一体になっていた方がコスト削減できると考えられがちだが、一概にそうとも言えないようだ。トータルで考えると分離発注の方がフラットな第三者の目で吟味するだけに良い建物が適正な価格で建てられるのだ。つまり、設計事務所は施工会社にとって都合のいい仕様・工法に縛られず、真に建築主の立場になって仕事をするオーナーの代理人なのである。

取材を終わって

環境に配慮した建物を多く作り、まるで街も息をしているような界隈を演出したいと語る岩田さん。テレビ番組で人気を博す『匠』シリーズ風に紹介するなら『自然環境共生住宅の匠』とでも呼びたい。そんなセンスと人間性を兼ね備えた印象を与える岩田さん。本物を求める風潮が強い昨今、きっとその内に秘めたる情熱とクールな視点で人間性に根差した独創的な作品を数多く生み出していくことでしょう。

「優しく、強く、清く」をイメージした医療関係の社屋。木材とアイボリーの色使いで落ち着きのある雰囲気に 4本柱の車庫と塗り壁の塀が湾曲を描きながら交わり、そこへウッドデッキが延びる家

有限会社千匠設計 概要

〒890-0055 鹿児島県鹿児島市上荒田町7-5 ネオ・シーズン405
TEL : 099-255-7020
建築士事務所登録 : 一級建築士事務所 1-20-195号
管理建築士 : 岩田 幸千一級建築士237488号

業務内容

建築工事の設計・監理、インテリア、照明器具、エアコンに関するデザインの企画・設計、看板・標識・オブジェ等のデザインの企画・施行

同社ウェブサイト

http://sensyou.net/

鹿児島県中小企業家同友会「お問い合わせ」